~いざ、美しき軽井沢の森へ~

冬の森から

■裸木(はだかぎ)の枝駆け抜ける栗鼠の背に
     負われて流るる時の速さよ

■秋去りて冬迎へむと競ひ合ひ
     衣を替える森かがやきて

■風渡り冬訪れて森の色
     競ひて替えるときぞ可惜(あたら)し

■音のない世界に戸惑ひ何思う
     老いたる犬に問ふ冬の朝

■穢れなき瞳に映る森の中
     栗鼠を見つめるわれ共にあり

■冬の森寂しかろうと裸木(はだかぎ)に
     巣箱のブローチ鳥を呼ぶかも

■裸木 (はだかぎ) に恥じらいおして
     眠りつついのち抱くは冬芽なるかな

■枯葉積むテラスの椅子の温もりも
     消えて主待つ長き冬かな

■白き峰孤高のひとの想いさえ
     隔てて屹立せし冬の朝

■風に舞い乾いた音立て肩寄せる
     色さえ温き枯葉山かも

■裸木(らぼく)とてうちにいのちを宿すれば
     樹肌も温きからまつの森

■冬に咲くコスモス花よ海風に
     異国の薫りをききてあととむ

■裸木(はだかぎ)の森に木枯らし吹き荒び
     枯葉に紛れて舞う風の花

■森の底白く煙りぬ風の中
     栗鼠の走りて訪れを待つ

■木枯らしに耳毛なびかせ木の実食む
     栗鼠の背朝陽に紅く染まるや

■厳冬の澄みたる空に月ひとり
     闇夜の底を照らして笑ふ

■木の実食む栗鼠おびやかす鳥の影
     冬来たりなばいのち競ふや

■厳寒の地にて生きむと木の実抱き
     急ぎ埋(うず)める栗鼠ぞいとしや

■黄泉という国への入り口そこかしこ
     見えぬは仮のこの世ばかりか

■吹き荒ぶ雪の向こうに見え隠れ
     やがては埋もれむ業の足跡

■暮れなずむ冬空の下の森の底
     白く光りて夜を迎えむ

■軽やかに跳ぶよに走る栗鼠の子の
     姿も清し雪積もる朝

■悠々と顔色かへずに我が森を
     足跡残してキツネ過ぎりて

■雪掻きて木の実隠せば嬉々として
     周囲見渡す栗鼠ぞいとしき

■初春の白き森にもめでたさの
     輝きあふるるありがたき朝

■凍てし雪踏めば乾いた音を立て
     森の冷気を震わせる朝

■白無垢の浅間の姫を包む青
     澄みてすがしき新しき朝

■冬の空晴れ渡りたるその色の
     悲しいほどに美しき青

■雪被り色を失くした森の中
     ひっそり飾るはシジュウカラかな

■雪を蹴り枝から枝へと渡る栗鼠
     こぼした笑みのいと温きかな

■朝陽浴びきらきら輝く樹氷にも
     色を添えむと鳥訪れぬ

■漆黒の鋭き嘴木に立てて
     紅き帽子を揺らすアカゲラ

■生きのびるためとはいえど栗鼠の実を
     もってゆくなと野鳥に告げむ

■尾長なる体を運びて森の中
     冬のヒヨドリ枯れ木に咲かむ

■野に生きるいのちをつなぐけもの道
     ついてくるなと声ぞ聞こゆる

■アカゲラや寄り添ふ番のむつまじき
     姿に森もぽっと赤らむ

■野に生きるいのちを思う心すら
     忘れて木を伐る人ぞ哀しき

■森の中雪見て笑ふイヌの目に
     映りしヒトは何を思ふや

■逆立ちたヒガラの冠羽に威厳見て
     腕白小僧も頭(こうべ)を垂れむ

■雪すらも融けるかシメの求愛に
     頷き返すカワラヒワかな

■追いかけて追いかけられてたわむれる
     栗鼠に見ゆるは夫婦善哉

■優しげな瞳に春を映しつつ
     北への渡りを待つアトリかな

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